「日本のメンタルヘルスは遅れてるらしいけど、どうして?」「日本のメンタルヘルスの歴史ってどんな感じなの?」など、日本のメンタルヘルス事情の実際がどうなっているのか、知りたい人もいるでしょう。
この記事では、日本のメンタルヘルスについて紹介していきます。
目次
日本のメンタルヘルスの歴史
精神病者監護法
精神病院法
精神衛生法
精神保健法
精神保健福祉法
日本のメンタルヘルスの遅れ
メンタルヘルスの遅れの理由
日本のメンタルヘルスの今後
まとめ
日本のメンタルヘルスの歴史
まずは簡単に、日本のメンタルヘルスの法律に関する歴史を振り返ってみましょう。
精神病者監護法
・1900年制定
・日本で初めての精神病者に関する法律
・精神病を理由とする不法監禁の防止を目的
・実際は精神病者を警察の監督下に置くものだったという批判もある
精神病院法
・1919年制定
・各都道府県に公立病院を設置する目的で作られた
・財政上の問題から進まなかった
精神衛生法
・1950年制定
・精神障害者の医療・保護に関する総合的な法律
・都道府県立精神科病院の設置を義務づけ
・指定病院ががある場合、設置延期が可能な規定があり進まず
精神保健法
・1987年に精神衛生法を精神保健法へ改正
・任意入院、精神保健指定医、精神医療審査会制度などを導入
・1984年に指定病院で起きた患者虐待事件を発端に、日本の精神科医療が国際的な非難を浴びた影響を受けている
精神保健福祉法
・1995年に精神保健法を精神保健福祉法へ改正
・社会復帰施設や精神障害者保健福祉手帳制度を導入
日本のメンタルヘルスの遅れ
日本ではメンタルヘルスの法律も、なかなか制度の目的が実現しない状況が多くありました。
患者への非人道的な扱いも大きな問題となっています。
同時期にアメリカは1963年のケネディ教書にはじまり、脱施設化政策を提唱しています。
入院中心の医療から地域でのサポートや外来治療中心へと転換し、大きく精神科の入院患者数を減らしています。
国としても精神疾患のある人を、地域や周りの人がサポートする考えが広まっています。
一方の日本は、精神科の病床数や平均的な入院日数も欧米各国よりも多く、入院医療に大きく依存しているのが現状です。
メンタルヘルスの遅れの理由
日本のメンタルヘルスの遅れには、以下のような理由があるとされています。
・精神障害者に対する社会的な偏見が強い
・精神疾患を恥ずかしいことや我慢すべきことと捉える国民性
精神疾患のある人に対する偏見が強く、地域でのケアが進めにくく入院に頼らざるを得ない面があります。
患者本人や家族も精神疾患を恥ずかしい、人に言えないという思いがあるのが現状です。
悩みやストレスに対して、「気合いや根性でどうにかする」といった考えも根強くあります。
海外に比べて日本では、精神科の受診やカウンセリングを受けることに対して、抵抗感を感じる人も多いです。
もちろん国民性や偏見だけではなく、社会的な制度などさまざまな要因がありますが、日本はメンタルヘルスにおいて海外に大きな遅れをとっています。
日本のメンタルヘルスの今後
過労死が世界的にも知られるようになったり、先進国の中でも自殺者が多いなど、近年日本のメンタルヘルスの遅れに対する社会的関心が急激に高まりました。
その結果、産業分野では「健康経営」という考えが唱えられています。
健康経営とは、簡単に言うと「会社が従業員の健康に配慮することで会社の業績も上がるから、社員の健康を管理しながら会社を経営しましょう」という考えです。
長時間労働やセクハラ・パワハラ防止の考えが浸透してきてはいますが、過労死やうつ病など課題は多くあるといえるでしょう。
まとめ
日本はメンタルヘルス後進国で、その背景には社会的偏見や国民性などが関係しているといわれています。
国内だけを見ても、メンタルヘルスの市場規模は350億円で、占いの1~2兆円に比べて市場規模の小ささも目立ちます。
健康経営など叫ばれてはいますが、現状の市場規模も小さく、まだまだ今後の発展が期待されています。
(公認心理師・臨床心理士)